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月経困難症とは? 受診の目安について
月経困難症とは? 受診の目安について

日本産婦人科学会では、『月経困難症とは、月経期間中に月経に随伴しておこる病的症状』と定義しています。

代表的な病的症状とは、生理痛つまり『月経痛』のことを指しますが、痛み以外でも月経中には以下のような諸問題をひきおこしています。

月経困難症  受診の目安:生理がつらい人すべて

生理痛がつらい

月経困難症  受診の目安

生理痛以外の諸問題

学校欠席回数がふえる

学校の成績が低下している

宿題を仕上げることができない

仕事がはかどらず、昇進できない、希望の職業につけない

家族・友人とスムーズにコミュニケーションできない

不眠症

自傷行為(=自殺を試みること)の増加

子宮内膜症の発症

不妊症の発症

慢性骨盤痛

生理痛でお悩みの方、鎮痛剤を使用している方へ

鎮痛剤を常用している方は、まずは受診して、婦人科の病気がないかどうかチェックすると同時に、痛みの向き合い方について相談してほしいと思います。

そして、『そもそも月経は痛みがあるものだと思っているし、みんな痛いだろうし、どのタイミングで受診したらいいか、わからない』という方もいると思いますが、そう悩んだ時点で受診してほしいのです。

さらに、『市販の鎮痛剤が効かない』ということがあれば、病的意義はさらに高いですので、必ず受診してください。婦人科の病気が隠れている可能性が大きいです。

 

月経が原因で日常生活に支障が出てくるだけでなく、以下のように将来的にも様々な病気のリスク因子にもなるのです。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック
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※甲賀かをり先生資料より改変

生理痛でお悩みの方、鎮痛剤を使用している方へ
生理の痛みは我慢する必要はありません

以下のように、月経随伴症候群はまさに氷山の一角で、現在から未来にまで、たくさんの問題をはらんでいるのです。

痛みの症状をなんとか乗り切れていても、問題を少しでも抱えていれば、どうか婦人科を受診し、よりよい方法がないか相談してください。

早めに婦人科受診し、月経困難症をうまくコントロールすることが、女性の未来を広げるのです。

痛みは我慢する必要はありません。

生理の痛みは我慢する必要はありません

思春期女子と月経困難症

最近は諸外国でも、思春期女子の学業成績の低下に月経痛がかかわっているとの報告が数多くみられます。

痛みの度合いが高くなればなるほど、成績が下がってしまうというデータがあります。

友人とも関係が悪化し、欠席日数が増えてしまいます。

ご両親としても、月経のせいで学校の成績が悪くなっていたり、学校生活を楽しめていなかったりしている状況は、ご心配のことと思います。

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思春期女子と月経困難症

メンタルヘルスと月経困難症

うつ・不安感上昇、自傷行為上昇などメンタルヘルスが低下し、社会的活動やスポーツにも関わりが低下し、あらゆるアクティビティが低下します。

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メンタルヘルスと月経困難症

慢性疼痛と月経困難症

月経困難症での生活の質低下は、中枢神経系機能を低下させ、脳の構造を変化させ、痛みを感じやすくさせます。全く関係ないところが痛くなったり不調を感じる、慢性疼痛も発症する可能性があるといわれています。

慢性疼痛と月経困難症

不妊症と月経困難症~長年月経痛をほおっておくと~

月経困難症の方の5人に一人は、将来子宮内膜症になるという報告もあります。

子宮内膜症になると、うまく管理しないと、妊娠・結婚・就職・子育てにいたるまで、女性の人生の選択肢が変わってしまう可能性があります。

まず子宮内膜症はおなかの癒着により、不妊症をきたします。

妊娠しても産科合併症も増やします。

さらに閉経後も女性ヘルスケアをわるくし、トラブルをもたらします。

卵巣癌、脳梗塞、心脈管疾患、虚血性疾患、骨粗しょう症なども月経困難症に関係していることが、近年の研究で明らかになりつつあります。

そして最近の考え方にエピジェネティックスという考え方があります。妊娠時に、母体が持病をもっていたり産科合併症をもっていたりすると、その赤ちゃんがうまれて成長すると、将来そのあかちゃんは病気を発症しやすいといわれているのです。

子宮内膜症は自分が将来生み育てる子供の未来にまで、影をおとしかねません。

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不妊症と月経困難症~長年月経痛をほおっておくと~

脳梗塞・心疾患と月経困難症

将来的にリスクがあがるといわれています。

脳梗塞・心疾患と月経困難症
月経困難症の種類

月経困難症には、器質的月経困難症と機能的月経困難症の2種類に分類されます。

月経困難症の種類
器質的月経困難症

子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮・腟・外陰部の形態異常(Wunderlich症候群、非交通性副角子宮など)、嚢胞性腺筋症などが器質的月経困難症の代表疾患です。

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子宮内膜症

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子宮腺筋症

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子宮筋腫

器質的月経困難症

子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫は、ホルモン依存性疾患です。

月経が来るたびに自分の女性ホルモンによって、病変が徐々に悪化していく病気です。

この3つの疾患は、お互いに似たような点がおおく、合併することが多いです。

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機能性月経困難症

対症療法だけでもコントロール可能な月経困難症です。

機能的月経困難症とは、子宮収縮によるもので、こちらは子宮の正常な機能が原因です。

器質的月経困難症が否定されれば、機能的月経困難症と診断されます。

月経中は1分に2~3回の頻度で子宮収縮がおこり、月経血を排出しています。そして月経中は、プロスタグランジンという痛みの原因物質がたくさん出ています。このプロスタグランジンをおさえるのが、いわゆる鎮痛剤で、月経困難症の基本的な対症療法になります。

しかし、以下のような注意が必要です。

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機能性月経困難症

対症療法(鎮静剤)の注意点

内服薬でもきかない場合、病気が隠れている場合があるので、早急な受診が必要です。一人で抱え込んだりがまんしたりせず、早めに受診して相談してください。

 

最初は機能性月経困難症だけであったとしても、月経を重ねるうちに子宮内膜症などの器質的月経困難症も発症することも多々ありますので、継続フォローは必要です。月経困難症の方の5人に一人は、将来子宮内膜症になるという報告もあります。

当院での治療方針

子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫などに代表される器質的月経困難症に対しては、主治療をしたうえで、以下の治療薬を併用します。

 

月経困難症の基本治療=鎮痛剤(NSAID)

痛みの物質=プロスタグランジンを抑える鎮痛剤(NSAID)が、月経困難症の基本の治療となります。

機能性月経困難症の方も、器質性月経困難症の方も、使用できる一般的なお薬です。

市販薬もあります。

『鎮痛剤を使うと体によくない』『鎮痛剤はできるだけ飲まないようにしている』と、なんとなく考えている方は多いと思います。

しかしむしろ逆で、痛みがつづく状態は、酸化ストレスを増加させ、体に様々な悪い影響をおよぼします。そしていったん痛みを感じると、どんどん痛みの物質が放出されるという悪循環にがなります。

つまり、鎮痛剤でアレルギー症状がおこったり体調が悪くなる方を除いて、鎮痛剤はしっかりと利用するべき方法です。

痛みを感じたらすぐ、できたら痛みを感じる前に、ご自身の体にあった鎮痛剤を内服しましょう。

子宮卵巣の痛みは座薬(肛門に挿入する薬)が良く聞きます。腸は子宮や卵巣に近い位置にあるため、局所的にダイレクトな効果が期待できるのです。内服薬でもきかない痛みに対しては、座薬も試すべき方法です。

鎮痛剤以外の治療法

〈抗コリン薬〉

子宮の収縮をやわらげます。思春期くらいの若い女性に効果的なことが多いです。鎮痛剤と併用すると効果的です。

〈ホルモン剤〉

ピル(LEP.OC)の内服も効果的です。避妊や他の婦人科疾患の予防といった副効果もあります。子宮腺筋症や子宮内膜症の方には、ジエノゲストやミレーナ(避妊リング)といったホルモン剤も使用します。

〈漢方薬〉

子宮の血流循環を多くして温める作用を持つ当帰芍薬散がよく効く方は多いです。漢方は体質改善の効果もありますので、機能性のみの月経困難症の方だけでなく、器質性月経困難症の方でも主治療に併用するとより効果的なことがあります。また月経中の痛み以外の様々な症状(だるさ・むくみ・食欲不振・イライラ)にも、その方の体質によってですが効果的なこともあるので、体質にあえば効果的な薬ではあります。

〈その他〉

  • カウンセリング

  • 子宮を温める温熱療法

  • 生活改善 規則正しい生活、ストレスのない生活をこころがけるのは、やはり基本ですが大切です。

当院での治療方針

継続的なフォローアップ

治療開始後もご自身のライフサイクルにあわせたフォローを継続的に致します。

月経があるうちは1~3か月ごとに、閉経前後の周閉経期は約3~6か月ごとに、閉経しても6か月~1年ごとに、定期チェックを行っていきます。

受診したときは毎回、痛みの評価を行い、治療が効果的かどうか相談していきます。

書類による十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)

来院時に以下の書類を作成しお渡しします。

継続的なフォローアップ

①月経手帳

月経手帳 冊子をお渡しします

  • 月経の周期、痛みの程度・様子、PMSなどの月経随伴症状、プライベートなイベントがある日、学校や仕事を欠席したなどを記入していただきます。

  • ご自身で心身の状態を把握するセルフケアにもつながります。

  • 記入が面倒でストレスになってしまうという方は、無理にかかなくても大丈夫です。

②状態説明用紙・診療計画書

月経困難症を診断した際は、イラストを使用して、現在の状態、診断名、提案した治療の選択肢、今後のおこりうるライフサイクルにあわせたリスク等を説明します。

説明内容はその場で用紙に記載してお渡しします。

  • 婦人科のことがらは、ホルモンの状態など複雑です。

  • その日に診断名をきいても、混乱し頭に医師の説明が入っていかない方もいらっしゃると思います。

  • もう一度、自宅でその用紙をみながら、ご自分の状況を振り返って確認してみたり、インターネットで調べたりするのに役立つと思います。

  • インターネットで調べて疑問点がでてきたら、次回の診察時に医師に質問してもいいでしょう。

  • あなたの体を心配しているご家族にも、その説明用紙があれば、おうちにかえってもご自身でスムーズに説明できると思います。

③お薬の説明書(ベネフィット、リスクなど)→薬を使用する場合

ホルモン剤などの薬を使用する場合は、そのお薬についての説明用紙をお渡しします。

相談のうえその日に処方を希望された場合や早急な治療が必要な場合はその日に処方致しますが、しっかり納得していていただいてから治療を開始したいというのが当院の根本理念です。

  • もろもろの説明をした後、その日の説明用紙をお渡ししますので、帰宅後にご自身で説明用紙をみながら考えたりネットで調べたりすることをお勧めします。

  • 次回来院されるときに、ご本人に最終確認のうえ、治療薬をお渡しします。そのほうがご自身で納得して治療法を選択していただけるので、結果として治療が長続きすると思います。

フレキシブルな対応

月経困難症に対して、原疾患の治療もしながら、来院していただくたびに、毎回薬の効きや症状や状態のチェックをし、方針について相談していきます。

一回方針をきめたらずっとそれでいくのではなく、体の状態やご本人の使用感などを評価・アセスメントし、プランを立てていきます。

女性の生涯にわたる管理

ご自身の状況、例えば、社会的背景、人間関係、まだキャリアを形成しているのか、挙児希望なのか(妊娠前に手術や薬物療法をトライするのか)、不妊治療をするのか(一般不妊治療なのかすぐに体外受精なのか)、閉経しているのか、いつまでどういった薬物療法を継続するのか、手術をするのか、手術をするとしたら、根治術をするのか、子宮や卵巣は残すのか、、、

 

女性にとってはそのライフステージやそれぞれの背景によって、その時その時の優先順位は異なります。女性自身だけでなく、女性をとりまく社会全体、次世代の健康にも影響をあたえうるのです。

適切な情報を全て提供し、女性の背景を考慮しながらしっかり相談したうえで、最終的には患者さんご自身できめてもらう。

当院は患者さん主体の医療をめざします。

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