子宮頸がん

婦人科

子宮がんとは

子宮がんには、子宮頸部(腟からつながる筒状の入口部)に発生する子宮頸がんと子宮体部(子宮の奥・内部本体)に発生する子宮体がんがあります。

子宮頸がんと子宮体がんの発生機序・原因は、全く違います。

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子宮頸がん(しきゅうけいがん)

子宮頸がんは、がんによる死亡原因の第3位、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位を占めています。特に20代から30代の女性においては、発症するすべてのがんの中で第1位となっています。

子宮頸がんの罹患率と死亡率

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日本における20~39歳の女性10万人当たりの各種がんの発症率推移

 

子宮頸がんは、子宮の入り口付近に発生することが多いので、婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすいがんです。実は早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよい癌なのです。しかし進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。

原因

性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus :HPV)が原因になります。

HPVは風邪のように日常的にありふれたウイルスです。一度の性交渉でもハイリスクのものに感染してしまえば子宮頸がんに発展する可能性があるため、だれにでも起こりうる癌であるととらえることが重要です。ただし性交渉の経験がなければ、HPVウイルスの感染の機会がないので、子宮頸がんになるリスクは極めて低いです。

HPV感染しても正常な状態からすぐがんになるのではなく、長期にとどまり続け持続感染することで、数年の間で細胞の形を変えていきます。

まず起こる細胞の変化は、上皮内の異形成です。軽度~中等度~高度異形成の段階を経て、上皮内癌になり、さらに増殖して上皮内にとどまることができなくたったものが子宮頸がんに発展します。

つまり、子宮頸がんを発症するまでには、①HPVの持続感染→②前癌病変(子宮頸部異形成)→③子宮頸がんというプロセスを経るため、実際に癌を発症するまでには10年前後の時間を要するといわれています。

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症状

子宮頸がんは、子宮の頸部でがん細胞が静かに増殖していくため、初期症状といえる症状がほとんどありません。

病気が進行しても、不正出血や性交時出血やおりもの異常など、生活に支障をきたすほどの症状ではありません。

そのため、定期健診と予防対策が大変重要です。

治療

子宮頸がんは、進行すると子宮をすべて摘出する手術が必要になり、妊娠、出産の可能性を失い、女性にとって心身ともに大きな負担になるばかりでなく、結婚・出産という人生の選択肢も狭まる可能性があります。しかし早期発見できれば、子宮頚部の癌が発生している場所だけを切除(円錐切除)したり、レーザー蒸散をして完治できる場合も多々あります。

なんどもお伝えしますが、早期発見・治療が重要です。

子宮頸部円錐切除術

​病変部を切り取ることで癌の進行を防ぎます

予防接種(HPVワクチン)
 

HPVウイルスとは

HPVウイルスが長期に持続感染することで、子宮頸部の細胞が変化し、子宮頸がんになります。このウイルスは皮膚・粘膜の接触で感染しますので、感染経路は性交渉によります。

ヒトパピローマウイルスは150種以上あり、風邪のウイルスのように非常にありふれたウイルスです。初回性交後4-5年で50-60%の女性が感染し、約8割の成人女性が一度はHPVに感染し、9割は自然に消えるといわれています。

しかし、HPVの型によりウイルスの性格が異なり、病気になる場所やその危険度は異なります。婦人科の領域では尖圭コンジローマのウイルスもHPVウイルスに含まれます。また男性の陰茎癌・喉頭がん・肛門がんにもHPVウイルスの感染が原因であることもあります。

子宮頸がんのウイルスは危険度によって、ハイリスク群とローリスク群に分けられます。

 

ハイリスク→16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,67,68 型

ハイリスク群に感染すると、のちに子宮頸がんになる率が高くなります。

特にHPV16、18、31、33、35、45、52、58型の8つのタイプはいずれも自然消失しづらく特に子宮頸がんに進展しやすいのでより注意が必要です。特にHPV16型と18型については、子宮頸がんの半数以上にこの型のウイルス感染があるといわれています。

 

HPVワクチンとは

HPVワクチンについて

子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は、日本では2009年に承認され、一般の医療機関で接種できるようになりました。主にHPV16型と18型を標的にしたワクチンですが、どこまで標的を網羅しているかでワクチンの種類が変わってきます。

このワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせた(不活化、殺菌)ものを原材料として作られた、不活化ワクチンです。

 

ワクチンの接種回数

1~2回の接種では十分な抗体ができないため、半年の間に3回の接種が必要です。ワクチンは3回とも、同じ種類のワクチンを接種します。ただし接種期間の途中で妊娠した際には、その後の接種は見合わせることとされています。

ワクチン接種の時期

性交渉をする前に接種したほうが予防効果が高いことと、ワクチンに対する免疫反応が思春期では特に良いので、9~14歳の女子に接種することが推奨されています。

ワクチンの接種方法

ワクチンは肩に近い腕の筋肉に注射します。

接種後は30分は接種した医療機関で待機してもらい、副反応がでたときに対応できるようにします。

 

ワクチンの接種後・副作用について

接種後には強い痛みがでることがありますが、これは体内でウイルス感染に対して防御する仕組みが働くために起こっています。通常は数日で落ち着きますので心配いりません。

しかし、注射部位以外でも痛みや腫れが出現したり、しびれ、脱力などの異常を認めたときは、ただちにかかりつけ医やワクチン接種医の診察をうけましょう。

現在は万が一副症状が出現しても、地域ごとに厚労省で定められた協力医療機関で、しっかりと診断・治療がうけられるサポート体制が構築されております。

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ワクチンの種類

2020年に9つのHPVを防ぐことができるワクチン『シルガード9』も承認されました。

サーバリックス 【当院:取り扱いなし】

16型・18型のハイリスクHPVの感染予防をします。60~70%の子宮頸がんが予防できます。

【当院:公費対象(小学6年生〜高校1年生)

ガーダシル   

任意接種(男性) 18,700円(税込)/1回】

16型・18型のハイリスクHPVの感染予防に加え、6型、11型の尖圭コンジローマの原因となるウイルス感染を予防します。

シルガード9         

【当院:任意接種(女性) 29,700円(税込)/1回】

2020年に承認された9価ワクチンです。ガーダシルで予防できるHPV6型、11型、16型、18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型のハイリスクHPVを標的にします。このワクチンにより90%の子宮頸がんが予防可能といわれています。

 

子宮頸がんワクチンの安全性

日本では、定期接種が始まってからわずか数ヶ月後、HPVワクチンの定期接種は中止となり、積極的な接種の呼びかけをやめるように方針が突然変わってしまいました。

 

その理由は一度はテレビや新聞で目にしたことがある、接種後の原因不明の広範囲にひろがる痛み、手足の動かしにくさ、不随意運動、しびれなどを訴えるケースがセンセーショナルに報道されたためです。

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HPVワクチン接種後に関わる症状について、2019年にWHOはIRSS;Immunization stress-related response(解離性神経症状反応)と定義しています。

IRSSは、複合性局所疼痛症候群(CRPS;complex regional pain syndrome)や体位性起立性頻拍症候群(POTS;Postural orthostatic tachycardia syndrome)のような、体質や精神的な素因に大きく関連していると言われています。

そしてIRSSの発生は、HPVワクチンを接種する・しないに関連せずに一定確率で発生することが大規模な試験で証明されました。

さらにWHOは「日本だけが、HPVワクチンの接種勧告を中止していることにより、若い女性が本来避けられるはずのHPVの脅威に暴露されている」と、異例とも言える1国のみに対する非難を行っています。

HPVワクチンについては、残念ながら日本は完全に世界の流れから取り残されてしまったと言わざるを得ません。

 

ただし因果関係はない、世界の常識とはいっても、HPVワクチン接種がきっかけになった可能性は否定できません。

確率としては1万人に1人の極わずかです。しかし低い確率とはいっても、その中に自分の娘さんがあたってしまったらと思うと保護者の方は接種に対して不安になる方もいらっしゃると思います。ご両親にとってはHPVワクチンに関係するかどうかが重要なのではなく、大切な娘さんが苦しむのはみたくない、つらいという気持ちだと思います。

万が一、重篤な痛みがHPVワクチン後に出現した場合でもしっかり完治するまでサポートがうけられるように、日本では地域ごとに連携センターをつくりました。

厚労省のHP:ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関及び 厚生労働科学研究事業研究班の所属医療機関(令和3年4月1日現在)によると、千葉県では千葉大学医学部附属病院(脳神経外科、整形外科)が登録されています。

そしてこの症状は、時間がかかるかもしれませんが治癒します。

それに対して子宮頸がんは命を落としてしまう病気です。

娘さんやご自身を子宮頸がんから守るために、まずは信頼できる病院に相談してください。

 

ぜひ信頼できる下記の情報をご参考にしていただき、安心してワクチンを接種しましょう。

​>日本産婦人科学会:『世界的な公衆衛生上の問題「子宮頸がんの排除」に向けたWHOの取り組み』

​>横浜HPVプロジェクト

​>HPV後の副作用協力期間

WHOの子宮頸がんへのとりくみ

世界保健機構(WHO)では、子宮頸がんを撲滅すべく、ハイリスクHPVを標的にした子宮頸がんワクチンを推奨しています。ハイリスクの子宮頸がんウイルスを排除すれば、子宮頸がんを大きく減らすことができます。

それに準じた国外の先進国では、HPVワクチンの導入を積極的にすすめています。71か国で国家レベルでのワクチンプログラムを導入しており、11か国では男児に対しての摂取も導入しています。

積極的にHPVワクチンを接種しているオーストラリアでは2028年には子宮頸がんが撲滅できるといわれています。悲しいことに日本ではまだ子宮頸がんの積極的な推奨が進んでいませんが、このような世界の情勢と同じく婦人科医の中では積極的な推奨意見が大多数です。正しい情報のもと、子宮頸がんの脅威からご自分やお子さんを守りましょう。

 
子宮頸がん検診

ワクチン接種を受けたとしても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。

ワクチンの対象になっていないウイルスやタイプの異なる癌もあるからです。

日本の子宮がん検診の受診率は40%台であり、他の先進国70~80%台であるのに比べて圧倒的に低いです。

 

定期的な検診で、前がん病変を発見することができます。

方法や費用は自治体によっても異なりますので、まずはお問い合わせをしてみてください。

 

方法1:子宮頸部細胞診

当院の費用:3,300円(税込)】

子宮頸部に腟鏡を挿入し、子宮の出口(子宮頸部)を露出して、柔らかいプラスチック素材のプラシで、子宮頸部をこすります。こするとブラシには細胞が付着しますので、それを顕微鏡で見て、悪いものかどうか判定します。

ほとんどは痛みはありませんが、内診が苦手な方は、腟鏡を挿入するときに痛みを感じることもありますが、ゆっくり深呼吸しリラックスして力を抜いて検査に臨めば、痛みも少ないです。緊張して力が入ってしまうと、余計に痛く感じてしまいます。

採取した細胞は、従来はスライドグラスにブラシを擦過して、それを顕微鏡で観察する2次元の検査でした。最近は、液状化細胞診というより正確に細胞を判定する方法が、多くの施設で導入されています。

液状細胞診の検査は、子宮頚部の細胞を専用ブラシで採取し、採取したブラシの先端とともに保存液の入った専用容器の中にまるごと保存します。つまり採取された細胞を無駄にすることなく、より正確な検体作成が可能となったのです。

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結果は、NILM(クラス1~2)なら細胞診陰性として問題なしという結果です。

しかしNILM以外は、全て異常という結果ですので、さらなる検査が必要になります。

 

細胞結果判定

腺細胞系異常

  • AGC(classⅢ)
    →異形腺細胞
    →頸部および内膜の組織診検査・画像検査(経腟エコー・MRI検査など)

  • AIS(classⅣ)・Adeno-Ca(classⅤ)など
    →腺癌の疑い
    ​→手術へ

[以下はすべて異常]

扁平上皮系異常

  • ASCU-S(classⅢ)
    →HPV感染の疑い
    →HPV(保険)検査へ

  • LSIL、ASC-H(classⅢ)
    →異形成の疑い
    →頸部組織検査へ

  • HSIL(classⅢ~Ⅳ)
    →異形成・癌の疑い
    →頸部組織検査へ

  • SCC(classⅣ~Ⅴ)
    →癌の疑い
    →手術へ

方法2:HPV検査

子宮頸部から細胞ではなく、粘液を採取してウイルスを調べる検査です。

日本ではほとんど細胞診検査で実施しており、ウイルス検査を実施している自治体や施設はまだ少ないです。しかし世界の検診事情として、国外先進諸国では、そもそもの子宮頸がんの原因となっているウイルスの感染があるかどうかをチェックするHPV検査の導入がすすんでいます。

今後は日本でも、HPV検査が増えてくると予想されます。

HPV簡易検査(スクリーニング検査)

【当院の費用:4,400円(税込)】

子宮頸がんに進行しやすいハイリスクのHPVに感染しているかを調べる検査。

 

HPV型判定ジェノタイプ検査

【当院の費用:22,000円(税込)】

HPVの感染の有無だけでなく、その型を特定しより精度の高い判定をする。

 

ハイリスクHPV;16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68 型

【費用】

自治体が実施している住民検診は、自治体からの補助があるため、比較的安く受診することができます。

場合によっては無料のこともあります。

しかし、保健所や自治体が指定した医療機関で受診する必要があり対象となる年齢、実施時期にも制限がありますので、一度ご自身で自治体へお問い合わせいただくことをおすすめします。

そのほか、職場健診や人間ドックなどの検診があります。

利用する制度により異なり無料でうけられるものもありますが、子宮頸がん細胞診だと一般的には1000円~5000円が相場なところです。

各施設ごとにご自身でお問い合わせをしてください。

2次検査(HPV検査・組織検査(コルポスコピー下精検)など)
 

HPV検査

細胞診がASC-USの場合、HPV簡易検査をします。

この検査は、スクリーニング検査の意味合いがあり、HPVに感染しているか(陽性)、いないか(陰性)をしらべます。この検査が陽性であれば、子宮頸がんの原因になるウイルス感染があるため、組織検査にすすみます。

 

コルポスコープでの確定診断が軽度または中等度異形成と判断した場合、または子宮頸部手術後の場合、HPV型判定ジェノタイプ検査をします。その後の経過観察の仕方や方針を考えるうえで、どの型のHPVに感染しているかを判定することで、より効果的な経過観察をするために検査をします。

 

コルポスコピー下生検

​【当院の費用:約5,000円】

細胞診検査がASCUSでHPV検査が陽性、またはそれ以上の細胞診異常の場合、2次検査に進みます。

 

「コルポスコープ」という腟の拡大鏡のような機械で子宮頸部を観察します。

前処置として酢酸加工をします(少し酸っぱいにおいがします)。酢酸を子宮頸部に塗布して1-2分しみこませることで、病変が白くうきあがります。前処置後に白く浮き上がったり、血管病変が出現したりするので、異常所見のある部位を狙って1~2ミリ程度、数か所を切除する生検(子宮頸部病理組織診断)を行います。

 

内診台で腟鏡を挿入したまま数分じっとしていなければいけないので、内診の苦手な方には苦痛のある検査かもしれませんが、切除といっても子宮頸部の浅いところは痛覚がないので、痛みはほとんどなく、多少出血がある程度です。

この検査で、がんの進行度を正しく知ることができます。

 

処置後は止血のため、ガーゼを挿入して半日経ったあとにご自分でガーゼをとってもらいます。

処置した日は湯舟につからずに、シャワー浴のみにしましょう。

下着に付着する程度の出血は数日つづきますが、1週間前後で止血します。

 

子宮の出口をしっかり視診で観察する必要があるので、月経中は施行できない検査になります。

切除といっても、子宮頸部の浅いところは痛覚がないので、痛みはほとんどなく、多少出血がある程度です。

この検査で、がんの進行度を正しく知ることができます。

 

子宮頸部細胞診の結果とコルポスコピー下生検での確定診断の結果との対応図

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子宮内膜組織診やその他画像検査

腺組織の異形細胞が出た場合、通常のタイプの子宮頸がんではない悪いタイプの腺癌系の異常が疑われます。

その場合は子宮内膜の検査やそれ以外の画像検査をします。

 
子宮頸部異形成

子宮頸がんの、がん化する一歩手前の「前がん病変」という場合が異形成です。

前がん病変はレベルに応じて、「軽度~中等度~高度」に分けられます。

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軽度~中程度異形成

そのまま正常な細胞に戻る可能性もあります。軽度異形成の場合は7~8割ほどの方が、自然に治ってしまいます。

しかし、高度まで進んだ場合は、子宮頸がんに進展する確率が高くなります。

高度異形成

高度異形成にまで進展してしまえば、上皮内癌以上の場合と同様に治療対象です。

治療はレーザー蒸散術、LEEP手術、円錐切除術などです。手術は子宮の出口のみを少し切除するだけなので、手術後も妊娠や出産は可能になります。しかし不妊症や流産・早産などの後遺症が残る場合があります。ご高齢の方や子宮頚管の奥まで病変が浸潤していると予想されるようなリスクの高い方の場合、進展の具合によっては根治術(子宮全摘術)を施行することもあります。

 

異形成以上の場合

手術が必要です。

当院では手術は施行しておりませんので、信頼できる病院へご紹介し転院して治療をうけていただきます。

 
 

定期的なフォローアップ

当院では子宮頸部軽度~中等度異形成までの方は定期的なフォローアップが可能です。

しかしHPVや既往、その方のライフステージや状況によって、早めに専門期間に転院していただく場合もあります。