ピル(OCとLEP)

婦人科

 
ピルとは

ピルとは、2種類の女性ホルモンがふくまれている錠剤です。

欧米では8~9割の女性が内服している常用薬です。

1日1回、毎日決まった時間に服用することで、より確実な効果と安全性が期待出来ます。

内服しやすいように、一日1粒のお薬をシート状にならべて1か月単位でのセットになっています。

避妊の効果以外に、月経中や月経前の症状を軽くしたり、月経周期を調節したり、肌荒れを改善する効果もあります。

子宮筋腫や子宮内膜症を抑制する効果もあるため、将来の妊娠にむけての体作り・メンテナンス(=プレコンセプションケア)としても有効です。

妊娠したくなったら、ピルの服用を止めれば妊娠可能なホルモン状態に戻ります。

低用量ピル(OCとLEP)について

2剤の女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)が配合された『低用量ピル』という飲み薬(錠剤)です。

かつてから使用されている中用量ピル(プラノバール)のホルモン効果を保ちながら副作用を減らして、女性が毎日、長期により安全に内服できるように開発されてきました。

 

婦人科の治療目的で内服する人も多い

『ピル』というと、日本では一般的に、避妊目的で使用される自費のピル(OC(=Oral Contraceptives))である低用量経口避妊薬をピルと呼ぶイメージが強いです。

保険のピルはLEP(=Low dose Estrogen Progestin、低用量エストロゲン・プロゲスチン療法)と呼ばれ婦人科の治療で用いられ区別されることもありますが、婦人科の治療として自費のピル(OC)を使用することもあります。

日本ではOC・LEP合わせて半分以上の方が、避妊目的以外に婦人科の治療目的でピルを内服をしています。

 
ピルの種類

当院では以下のピルを取り扱っています。

★印:後発薬(ジェネリック)

 

OC・・・(低用量)経口避妊薬[自費]

 

LEP・・・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠[保険]

 
ピルの費用・受診料

ピルの一般的な値段は一か月で600円~2,000円前後です。

保険(3割負担の場合)のピル(LEP)の中には一か月で約600円で内服できるものもあります。

 

OCもLEPも先発薬と後発薬(ジェネリック)の2種類があり、主成分は同じですが、添加剤などが異なっており、後発薬のほうが値段が安くなっています。

 

受診するときは、そのピル自体の値段に加えて、初診料・再診料、処方料、薬剤情報提供料として約1000円が追加された値段がかかります。

 
ピルのメリット
 

①避妊

正しく服用した場合の避妊失敗率は0.3%です。

日本で一番多い避妊法であるコンドームの一般的な避妊失敗率は25%と言われています。

コンドームには性感染症を防ぐことができるメリットがある一方で、使用方法が正しくなかったり、破れてしまったりするデメリットがあります。

妊娠を望まない場合、コンドームとピルを併用することで大変高い避妊効果を示します。ピルだけでは性感染症には無防備なので、併用することが望ましいです。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック

しかし、飲み忘れや他の薬との併用での飲み合わせ、胃腸炎の状態での内服など、正しく服用できなかった場合は、避妊効果は弱くなりますので毎日きちんと正しく服用することが大切です。

また避妊効果があるのは規則正しくピルを飲んでいる間だけです。服用をやめれば1~3ヵ月後には排卵周期に戻ります。

 

②月経周期が規則正しくなる

ピルのコントロールされた低用量のホルモンで、規則的に月経がきます。

ただしくは排卵が起こっていませんので、月経ではなく消退出血といいます。

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③月経周期の移動ができる

試験や試合、コンクール、旅行や温泉、デートの日など、女性には月経に当たってほしくない日があると思います。

ピルでホルモンを調整することにより、調整開始日にもよりますが、月経を予定よりも前倒しにも後ろ倒しにもすることも可能です。

 

④月経量が減る

通常の自然のホルモンよりも低用量のホルモンのため、子宮内膜が厚く育ちません。

月経とは子宮内膜が剥がれ落ちる現象なので、子宮内膜の量(≒内膜の厚み)が多ければ、月経量も多くなりやすいので、ピルで薄い内膜にしておけば、出血量も少なくなります。

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⑤貧血が改善する

月経量が減れば、出血量がへるので、血液中にふくまれた鉄分の流出もおさえられます。

またピルによっては月経回数自体が減らせるので、さらに貧血になりません。

 

⑥生理痛が軽くなる【=月経困難症の改善】

排卵や月経で分泌される炎症物質を抑えられるため、痛みが少なくなります。

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また、子宮内膜の量が減るため、子宮が内膜を押し出す負担も軽くなるため、子宮の収縮痛による生理痛が軽くなります。

 

LEPであるルナベル、フリウェル、ジェミーナ、ヤーズフレックスは、こういった月経困難症に対して保険適応があります。

OC・LEPが子宮収縮に与える影響

​月経困難症

自然周期は子宮内膜が厚くより強い収縮をして内膜の排出が必要。

OC・LEP内服の場合

ピルの周期だと子宮内膜が厚くならないため、自然周期のような強い収縮でなくても内膜が排出できる。

⑦PMSが軽減する

PMSとは月経前の不快症状全般です。

ピルのコントロールされた低用量のホルモンで、PMSは軽くなります。

また、連続投与やフレックス投与で、月経の回数自体を年に3~4回に減らすことは、大変有効です。

PMSの診断名だけでは保険適応にはなりませんが、月経困難症の診断も医師により合わせてされれば、ヤーズフレックスやジェミーナを試してみるといいと思います。

 

⑧ニキビや多毛の改善

エストロゲンや黄体ホルモンは、ニキビや多毛の原因となるテストステロンという男性ホルモンに密接に関わっています。

黄体ホルモン自体もアンドロゲン作用といって、食欲増進、体重増加、多毛、ニキビなどの作用があります。

低用量ピルは、量や質が開発され、アンドロゲン作用をより抑える事が可能になったため、ニキビや多毛も改善します。

 

⑨PCOSの悪化の抑制

PCOSとは?

PCOSという体質では、毎月の排卵がうまくおこなわれません。

卵巣は本来はお豆腐のように柔らかい組織で、卵子は月に1回、卵巣から表面を突き破って排卵がおこります。しかしPCOSの状態ではテストステロンというホルモンの作用によって、卵巣の表面は月経が来るたびごとに硬くなっていきます。

長くPCOSの状態がつづくと、妊娠したいなと思ったときには、卵巣がガチガチに硬くなってしまって、物理的に卵子が硬い卵巣の表面をつきやぶることが難しいという状態になっています。

ピルで柔らかい卵巣を保つ

ホルモンが調整されたピルを内服することで、卵巣も休ませるので、現状以上に卵巣表面が硬くなるのを抑え、お豆腐のような柔らかい卵巣が保たれます。赤ちゃんが欲しくなったらピルを中止することで、数か月以内に月経がくるので、そこから妊活をスタートしやすくなります。

ピルを内服することで、プレコンセプションケアが可能になるのです。

子宮内膜癌のリスク軽減

PCOSの方は排卵がおこりづらく、エストロゲンに長期に暴露された子宮内膜がはがされないため、閉経後以降に子宮内膜癌になりやすいといわれています。

低用量でかつ子宮内膜保護作用のある黄体ホルモンが配合されたピルを内服することで、定期的に内膜がはがれる消退出血がおこすことが可能であるため、将来の子宮内膜癌になりやすいというリスクも減らすことができます。

 

⑩子宮内膜症・子宮筋腫の悪化の抑制、手術後の再発予防

子宮内膜症や子宮筋腫は、理論上は自然の月経が来るたびごとにそのホルモンで悪化するといわれています。

ピルのコントロールされた低用量のホルモンで、子宮内膜症が悪化していくのを抑制します。筋腫に関してもある程度は抑制する可能性がいわれています。

内膜症や筋腫は体質も関わるため、手術後も再発が多いと言われています。

再発予防としても、ピルは効果があるといわれています。

 

⑪卵巣がん・子宮体がんの予防

ピルを内服することで卵巣を休ませます。

このことで炎症物質などがでず、有害な酸化物質が放出されるのを防ぐため、卵巣癌になりずらいといわれています。

また、低用量に調整されたエストロゲンに暴露された子宮内膜も定期的にはがすので、子宮体癌のリスクも下げるといわれています。

 
ピルの副作用(デメリット)
 

①マイナートラブル

  • 吐き気

  • 不正出血

  • 乳房の張り

  • 頭痛

  • むくみ、など

これらの症状が出るのは初めの1~2ヶ月で、飲み続けているうちに治まってきます。

 

②血栓症

血栓症とは

飛行機に長時間同じ姿勢で乗っていたりすると発生するといわれる、エコノミークラス症候群ともよばれます。

脱水状態でずっと同じ姿勢でいると、抹消の循環状態が悪くなるため小さな血の塊(血栓)が足のつま先などの細い血管にできます。それが何かの拍子に体の各部に流れ、生命を維持するのに大切な臓器に血栓がつまってしまうと、命が重篤になってしまうという怖い病気です。

脳につまると脳梗塞、心臓に詰まると心筋梗塞、肺に詰まると肺塞栓症になります。

 

血栓症になる確率

そういった血栓症のリスクが、ピルには頻度は低いですが、存在します。

ピルに含まれるホルモン、とりわけエストロゲンは、おおければ多いほど血液に血栓ができやすい血液状態にします。

ピルでの血栓症のリスクは、10000人に3~10人といわれています。

 
よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック

あくまでも相対頻度の問題ですが、ピルを内服している人では、薬剤を使用していない一般女性に比し2~6倍の血栓リスクがあります。 

日本での交通事故での死亡率に置き換えると、妊娠やピルを内服していない方のリスクは原付での死亡率とすると、ピルを内服している人のリスクは自転車での死亡率と同じになります。

日本における交通事故死傷者数(平成27年)

原付:3.1人/人口10000人

  ↓ 2.6倍

自転車:8.1人/人口10000人

血栓症になりやすい人

血栓症のリスク因子は、喫煙や肥満、年齢(40才以上)、持病や体質のある方です。

タバコをすっているという方や肥満の方などは、喫煙や減量など、改善できる場合は改善させてからピルを内服することは可能ですが、年齢や持病・体質などの、改善できない体質がある場合はピルを内服できないことがあります。

詳しくは内服できない方・注意が必要な方へ をご確認ください。

血栓症の症状

代表的なものはACHESといわれます。

  • A:腹部動静脈血栓症

  • C:肺動静脈血栓症

  • H、E:脳梗塞

  • S:下肢深部動静脈血栓症

上記以外でも「いつもと様子が違う」ということがあれば、早めにご相談してください。

血栓症に関する検査

D-Dimer(ディー ダイマー)を代表とした血液凝固系の採血検査で判明しますが、実際起こってからでないと探知できません。

つまり、患者さんが症状を理解し、注意することが、発見の第一契機になるのです。緊急性がある場合は,循環器科または脳神経外科への受診をしてください。

③肝機能障害

ピルは肝臓によって代謝されますので、人によっては肝機能障害が現れる事があります。多くは軽度のものですが、念のため6か月~1年ごとに採血して悪化がないか確認しながら内服することが安心です。

 

④子宮頸がんや乳癌を増加させる可能性

ホルモン剤の暴露により、心配されます。増加させないという報告も同様にありますが、やはり注意は必要です。(反対に卵巣癌や子宮体癌、大腸癌のリスクは減らします)

必ず年に1回は子宮頸がんや乳癌の検診を受けましょう。

 

詳しくは診療時に確認させていただきます。​

 
ピルを内服できない方・注意が必要な方