感染症

婦人科

 
婦人科で扱う感染症

婦人科で扱う感染症には、雑菌や常在菌叢(腟内フローラ)による疾患や、性行為によって感染するSTD(STIとも呼ばれます)があります。悪化すると子宮卵巣を超えて広がっていきますので、症状がでたら早めに受診することが大切です。

炎症が子宮や卵巣を超えて広がった状態

 
STD以外の感染症

膀胱炎・尿路感染

おしっこがたまるところ=膀胱に細菌が繁殖し、排尿に際しての様々なトラブルをひきおこします。

男性に比べて女性は尿道が短いため腟や肛門からの雑菌が混じりやすいため、膀胱炎を起こしやすく、女性の2人に1人がかかると言われています。

 

症状

三主徴として、

1)トイレに行く回数が増える(頻尿)

2)排尿時に痛む(排尿時痛)

3)尿を出し終わってもまだ残っている感じがする(残尿感)

です。

 

尿が濁ったり、悪化すると血尿がでることもあります。

さらに症状が悪化すると、腎盂腎炎などの病気を引き起こし発熱し、背中や腰に強い痛み(叩打痛)が発生する。悪心・嘔吐や倦怠感も発生することもあります。

抵抗力が低下している状態や、月経の前後にかかりやすく、また不潔な状況下でのセックスも膀胱炎の引き金になります。

治療

治療は十分な水分摂取と抗生剤の内服で1週間もすれば治りますが、閉経後の大腸菌、薬剤耐性菌(キノロン・セファロスポリン耐性菌やESBL(基質特異性拡張方βラクタマーゼ産生株))、トリコモナスによる膀胱炎は難治性になります。難治性の膀胱炎に対しては培養検査をして原因菌を同定することが大切です。

 

また、バイ菌が原因で起きる膀胱炎(単純性膀胱炎)以外に、ウイルスや排尿障害・前立腺肥大・尿路結石・膀胱内憩室・腫瘍・糖尿病・ステロイドや抗癌剤投与中などに起因して生じる膀胱炎(複雑性膀胱炎)もありますので、難治性の膀胱炎に関しては泌尿器科医やかかりつけの主治医に相談することが必要です。

悪化すると腎盂腎炎に進行し入院が必要な場合もあります。

 

妊娠の可能性のある方

ニューキノロン系の抗菌薬は膀胱炎治療薬として多く使用されますが、胎児に催奇形性があります。

妊活中の方や、妊娠の可能性がある方は、受診した病院で『妊娠の可能性があること』をご自身で病院のスタッフ・医師にしっかりと申告しましょう。

細菌性腟炎

細菌性腟炎とは

腟内の善玉菌が減少し他の悪玉菌が異常増殖することで、腟内フローラが乱れ腟の自浄作用が低下し、おりもの不快症状やかゆみが出現します。繁殖した雑菌が広がると、子宮や卵巣の炎症、骨盤腹膜炎(PID)を引き起こしたり、STDにかかりやすくなります。

妊娠中だと、胎児を包んでいる膜に炎症が広がり(絨毛膜羊膜炎)、流早産や子宮感染症を引き起こすことがあります。

細菌性腟症は性行為以外の原因が多いので、日本性感染症学会では、性感染症(STD)としてではなく、性感染症関連疾患と位置づけし、STDとは区別しています。

 

カンジダ外陰腟炎

カンジダ外陰腟炎とは

カンジタという真菌(カビの一種)が腟・外陰部に増殖し、おりものの不快症状やかゆみがおこります。頻繁に見られる病気で、75%の女性が生涯で一回は症状がでるといわれています。再発を繰り返すことが多く、予防も重要です。

カンジダ菌はもともと人間の消化管や皮膚にも存在する菌(常在菌)で、腟内にも少量存在することが多いです。通常は病原性は弱く、検査で見つかっただけでは何も問題ありませんので、無症状であれば治療の必要はありません。しかし抵抗力が弱くなると、かゆみなどの不快症状が出現するので治療対象になります。

典型的なものは、「カッテージチーズ状」のポロポロした、またはクリーム状のおりものです。

外陰部・腟に、ヒリヒリしたようなかゆみが出てきて、悪化すると掻き壊して炎症が起こり皮膚がただれてしまいます。

 

検査:腟培養

細長い綿棒で、腟・外陰部からおりものを採取します。

検査は数秒で終了し、痛みもほとんどありません。

検査と同時に腟洗浄(これも数秒)もします。

検査結果がでるまで1~2週間ほどかかります。

通常は検査結果がでてからその標的菌に関して治療をしますが、症状の状態によっては、視診や直接顕鏡をもとに治療を開始することもあります。

1~2週間後、来院していただき、検査結果とあわせてご自身の症状・様子次第で追加治療が必要か医師と相談します。

※内診が苦手な方や婦人科検査が初めての方、性交渉が未経験な方も受けられる検査です。

心配な場合は診察前に、必ず医師に相談してください。負担のない方法での検査を医師と相談しながら検査していきます。

治療:腟剤・外用薬・内服薬・サプリメント

原因菌に適した腟剤・外用薬を使用します。難治性の場合は内服薬を使用することもあります。

腟剤使用中は、ビデ(腟内洗浄)やタンポンの使用、殺精子剤の使用、性交渉は控えるようにしてください。

1~2週間で症状がなくなる場合がほとんどですが、軽快しない場合は他の原因菌がいないか検査をしたり、糖尿病などの持病がないかどうか検索します。

頻回の腟洗浄は、推奨されません。洗浄を頻回に行うと、善玉菌と悪玉菌を両方取り除かれてしまい腟内フローラが破壊され自浄作用が低下することで、腟炎やSTDになりやすい状態になります。

難治性の場合はサプリメントの内服をおすすめです。体質改善をして根本からアプローチします。

予防・管理について

~普段からできること~

〈サプリメントの内服〉

  • ​ラクトフェリンの内服

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〈着衣の工夫〉

  • 高温で高湿な環境 (夏場・パンストや化学繊維でできたきつい下着・ ジーンズ着用時)にはカンジダ菌や悪玉菌を増殖させる可能性があります。通気性の良い綿の下着や、ゆったりした洋服を着用しましょう。

  • シャワーや水泳の後はデリケート部分を乾燥させてから着替える。

  • ナプキンやおりものシートはこまめに交換する。

 

〈生活習慣の改善〉

  • ストレスをためない

  • 健康管理に留意し栄養バランスのとれた食事と運動、休養をとる

  • 排便・排尿の時は、前から後ろにふきとる。

  • 便秘にならないようにする。

  • タオルを他人と共用しない。

  • 良質の乳酸菌を多く含んだ食品を摂取する

 

〈デリケートゾーンのケア〉

  • デリケートゾーン用の泡石鹸を使用する。

  • 極度の腟内洗浄(ビデ)やデリケートゾーンの洗浄は避ける。

  • 清潔な状況下でセックスをする。

日常生活でできることはたくさんあります。

それでもかかってしまうときは、我慢をせず、気軽に婦人科を受診しましょう。

 

萎縮性腟炎

萎縮性腟炎とは

閉経後は卵巣からのエストロゲンの分泌が失われるため、腟粘膜のエストロゲン濃度も低下します。

すると腟粘膜はデリケートな状態になり、炎症がおこったり、ばい菌が入りやすい状況になります。

これを萎縮性腟炎とよびます。

 

症状

外陰部の違和感、痛み、掻痒感など、さまざまです。

 

治療

局所ホルモン薬を腟内に挿入するのを1~2週間継続することで治ります。

​しかし、しばしば繰り返すのでその都度受診をしてください。

近年はレーザーによる治療(自費)も行われます。当院でも将来的にレーザー治療の導入を視野にいれています。

 
STD(性感染症;Sexually Transmitted Diseases)

性行為によって感染する感染症です。

治療はパートナーと同時治療が必須

  • 一人が感染していたら、パートナーも感染していると考え、お互いの治療が必要になります。

  • STDにかかったら、お互いが治療し、完治するまでは性交渉をしないことが肝心です。どちらかの治療が不完全だと、せっかく一方が治療しても性交渉によりすぐ再感染してしまいます(ピンポン感染)。

 

治療後のフォローも必要な場合がある

  • 完治したかどうかの再検査(効果判定)が必要な場合や、潜伏期が長いために完治してからも性交渉禁止期間を長く持つことが必要な場合もあります。

 

コンドームで全ての感染症は防げない

  • 感染予防には一般的には、適正な使用をすればコンドームが有効ですが、尖圭コンジローマや性器ヘルペス、梅毒に関しては有効性は低いといわれています。また、オーラルセックスには無効です。

  • 不特定多数との性交渉は感染リスクが高くなります。

  • 避妊に対してはOCやミレーナで対応していても、感染には無防備ですので、なるべくコンドームも着用しましょう。

 

クラミジア感染症

クラミジア感染症について

日本では一番多いSTDです。

20人に1人はかかったことがあるといわれるほど、非常に感染力が強いウイルスです。

セックスで感染するとクラミジア頚管炎に、オーラルセックスやディープキスでクラミジア咽頭炎になります。

無症状のことが多いですが、悪化する場合は骨盤内腹膜炎となり、入院や手術が必要になります。無症状の場合でも徐々に進行して、腹腔内の癒着をおこし、腹痛・月経痛・不妊症になってしまいます。

淋菌と合併することも多いので、症状がある場合は、淋菌の同時検査が推奨されます。

 

治療について

治療は内服薬ですが、重症化すると入院や点滴治療、手術が必要になります。

しかしクラミジアは耐性菌が出現することもあるため、治療時から3週間たったあとに、クラミジアが完治したかどうかの再検査(効果判定)を必ず行います。

その検査の結果が陰性(=病原はいない)とわかれば完治と診断できます。

 

淋菌感染症

淋菌感染症について

クラミジアと並んで骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こす代表的な疾患です。

注意が必要なのは、薬剤耐性菌が多いことと、クラミジアとの混合感染が多いことです。

オーラルセックスやディープキスでは咽頭炎にもなります。

腹痛が主症状で、クラミジアと同じく、悪化すると子宮や卵巣を超えて骨盤内炎症性疾患(PID)、肝周囲炎、咽頭炎、結膜炎、など、全身症状も引き起こします。場合によっては入院や緊急手術が必要になります。

慢性炎症によりお腹の中の癒着をひきおこすので、不妊症や異所性妊娠にも関わります。

治療

治療は抗生剤の内服または点滴ですが、悪化すると入院し点滴治療や手術療法が必要になる場合もあります。

耐性菌が多いため、クラミジア同様に、治療から3週間後以降に、完治したかどうか確かめる再検査(効果判定)が必須です。効果判定で陰性(=病原はいない)と判明したら完治したということになるのも、クラミジアと同様です。

 

腟トリコモナス症

腟トリコモナス症について

においのある泡沫状の黄緑色のおりものが出て、外陰部・腟の猛烈なかゆみ・ただれが出現します。

トリコモナスという原虫が原因で、世界的にはクラミジアより多くの女性が感染しているとの報告もあります。

タオルや下着、不特定多数の人が使うトイレやお風呂場、プール、脱衣所などで感染することもあるため、性交渉の経験がない女性や幼児にもしばしば感染者がみられることもあります。

治療

治療はメトロニダゾール(フラジール)の内服または腟剤投与です。フラジールの内服をする場合は、アルコールを併せて摂取すると顔の紅潮、頭痛、嘔吐、腹痛といった悪酔いの症状が生じるため、服用中はアルコールの摂取を控えてください。

 

性器ヘルペス

性器ヘルペスについて

外陰部周囲の痛み、ただれ(潰瘍)やみずぶくれ(水疱性病変)が主症状で、くりかえし再発することが多いです。

 

治療

治療は抗ウイルス薬の内服が基本です。ただれがひどい場合は外用薬も処方されますが、外用薬は自費になることも多いです。頻繁に再発(年に6回以上)するときは予防内服を開始します。

 

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマについて

外陰部・肛門周囲や子宮頸部・子宮腟部(腟の奥)にできるイボです。子宮頸部・子宮腟部(腟の奥)にも発生します。

原因はHPVウイルスで、主に6型と11型が原因です。4価・9価の子宮頸がんワクチンを打つことで尖圭コンジローマの予防ができます。

 

治療

治療は外用薬や切除術です。

尖圭コンジローマは正常組織である腟前庭乳頭腫症と鑑別が必要なことがあります。視診や病理の検査ではわかりづらいことが多く、ローリスクHPV検査が有用になります。

【ローリスクHPV検査費用:5,720円(税込)】

 

梅毒

梅毒について

梅毒スピロヘーターという原虫が原因で、かつては命を落とす性病とされ蔓延していましたが、抗生剤の普及により治癒する病気になりました。しかし最近は同性間性的接触者の感染も多く、増加傾向であり、注意が必要です。症状は外陰部の皮膚・粘膜面の症状に始まり(第1期)、口腔や全身の皮膚に広がる症状がでたあと(第2期)、大血管などをむしばみ全身状態を悪化させます(第3期、第4期)。現代の日本では第3~4期梅毒はほとんどみられません。

 

治療

治療は抗生剤の内服で、採血検査を定期的に行いながら、いつまで継続するかきめていきます。

 

HIV・B型肝炎・C型肝炎

全身疾患です。

内科にて治療を行います。

 
炎症が子宮や卵巣を超えて広がった状態
 

骨盤内炎症疾患(PID)

骨盤内炎症疾患について

様々なバイ菌がお腹に広がって炎症により痛くなる病気でPID;Pelvic inflammatory diseaseと総称されます。具体的には子宮内膜炎、子宮留膿腫、付属器炎、卵管卵巣膿瘍、骨盤腹膜炎などの病気を含みます。

バイ菌が性交渉や子宮内操作を契機に腟から入り、子宮から腹腔内に広がる上行性感染が主体ですが、一部は虫垂炎(盲腸)や結核性腹膜炎から炎症が広がる下行性感染もあります。

複数のパートナーと性交渉があったりSTDの既往のある人、子宮内膜症のある人、子宮内避妊器具を留置している人は、リスクが高いです。

 

症状

症状は、おりものの異常や腹痛などの局部症状から始まり、発熱(高熱)や悪心・嘔吐などの全身症状に発展します。

 

治療

治療には原因菌にあわせた薬剤を内服や点滴で使用します。ひどい場合や腹腔内膿瘍がある場合は緊急入院して手術が必要になるほどのものもありますが、症状が軽い人でも慢性的な炎症が続くと、不妊症や異所性妊娠のリスクになります。

慢性的に進行したPIDや過去のPIDによる癒着で不妊症になってしまった場合は、体外受精などの不妊治療や癒着を剥離する腹腔鏡手術や卵管手術が必要になる場合もあります。

 
感染症のスクリーニング検査(STDドック)

推奨される方

今後、挙児希望がある女性

パートナーが性感染症の既往を持っている女性

複数のセックスパートナーがいる女性

性産業従事者(コマーシャル・セックス・ワーカー:CSW)

パートナーが性感染症の既往を持っている方

に対し、希望により自費で検査をします。

 

自覚症状があったりパートナーの感染が判明している場合は保険診療内で検査を行いますが、症状はないけれど、上記に該当する方は、希望により自費で検査をします。

将来的に困る合併症を予防し、他の人に病気を伝播することを回避する目的で行います。

自治体により、梅毒、HIVや肝炎などの一部の項目で匿名でですが希望をすれば、検査を行うこともあります。

性産業従事者の場合は会社が1~3か月ごとに定期的に検査することを義務付けているところもあります。

その場合は自治体の匿名のものでは有効ではないので、受診をし、必要な項目を検査しましょう。

会社の規定がなくても、自分を守るために、定期的な検査をすることはおすすめです。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック
 

性感染症のスクリーニング項目

  • 性器クラミジア・淋菌(子宮頚管を擦過する抗原検査)

  • 咽頭クラミジア・淋菌(咽頭擦過、うがい液*などでする抗原検査)

  • 梅毒(血液検査)

  • HIV(血液検査)

  • トリコモナス(培養検査、顕鏡検査)

  • B型、C型肝炎ウイルス(血液検査)

*オーラルセックスの普及により需要がある検査です。

様々なプランをご用意しております。

相談しながら、オーダーメイドのプランを提案いたします。

​どうかお気軽にご相談ください。