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卵巣について
卵巣について

卵巣は、子宮の横に左右1つずつある組織です。

 

『子宮は女性の象徴』というのは間違いではないのですが、実は子宮自体は筋肉の塊で、女性らしさをつかさどるホルモンを分泌しているのは卵巣です。

脳から分泌されるホルモンと連動しながら、女性ホルモンの代表であるエストロゲンと、それと対になる黄体ホルモンを分泌して、女性の月経周期を営んでいます。

 

つまり子宮を手術で摘出しても、女性らしさは消えることはありませんが、閉経前に卵巣を左右両方とも手術で摘出すると、ホルモン分泌がなくなるので、ホルモン補充が必要になります。ただし癌などの悪性疾患の場合はホルモン補充してはいけない場合もあるので注意が必要です。

卵巣は左右あわせて2つあるので、片方の卵巣を手術で摘出しても、もう片方の残った卵巣がホルモンを分泌するので、ホルモンの分泌がなくなることはありません。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック

卵巣の内部には目にみえない大きさの卵子が貯蔵されています。その卵子が0個になるのが閉経ですが、そうなると卵巣からはほとんどホルモン分泌はなくなり、卵巣は機能しなくなります。

 

卵巣はさまざまな原因ではれることがあり、自然に経過をみていいものか、薬で治る可能性があるものなのか、手術で摘出が必要なものなのか、その治療の緊急性もふくめ、みきわめ判断することが必要です。

婦人科では、経腟超音波、採血、MRI画像で卵巣の腫れを診断し、薬でなおるのか、手術をするのか、経過をみていいものなのか、どのタイプなのかを見極めて方針をきめます。

自然に消える可能性のある卵巣の腫れ(黄体嚢胞、機能性嚢胞、偽嚢胞)
自然に消える可能性のある卵巣の腫れ(黄体嚢胞、機能性嚢胞、偽嚢胞)

卵巣はホルモンを分泌するため、卵巣自体も周期的に変化します。

卵巣の中には卵子のふくろ、卵胞があり、月に1回通常1つの卵胞(なかに卵子がはいっている)が発育し、排卵直前に2cm程ふくらみます。

排卵後は卵子がでていった卵胞は黄体に変化します。

黄体は腫れてみえることがあり(黄体嚢胞)、内部に出血がたまっていることも多々あります(出血性黄体)。黄体は通常でも3cm前後くらいに腫れることも多いですが、次の月経がくるまでには消失し、通常の卵巣にもどります。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック

大きさが大きいと、次の生理がきても完全には消失しないこともあり、これを遺残卵胞とよびます。

完全に腫れがひくまで数か月かかることもあり、卵巣を休ませるためにピルを使用することもあります。

 

しかし、時に10cm近くに腫れることがあります。大きくはれる場合はその刺激によって腹痛や腹部刺激症状がでて、時に卵巣が捻じれたり、黄体から出血が持続したり(卵巣出血)する場合は入院治療が必要になることがあります。

 

上記の場合を除き、ホルモンの増減による卵巣の腫れは、機能性嚢胞(機能性卵巣腫大)とよばれ基本的には自然に経過をみることで治ります。妊娠初期であったり、ホルモンを変化させる薬の治療をしていたり、ホルモン剤の入った避妊リング(ミレーナ)を使用中にもよくみられます。

 

閉経後もわずかなエストロゲン分泌の持続により、卵巣にお水がたまることがあります。消失しないことも多くありますが、その場合でも手術はせず経過をみることが多いです。

偽嚢胞といって、卵巣ではない腹腔内の癒着による腫れや水たまりなどが一見卵巣腫大にみえるものもあります。

薬でなおる可能性のある卵巣嚢腫(内膜症性嚢胞(チョコレートのう腫))

内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)は、ジエノゲストやピルなど、子宮内膜症の薬で軽快します。薬で完全に消失しても、閉経になるまでは、薬をやめるとまた自分のホルモンで再発することが多いので、閉経前まで内服して再発しないようにコントロールすることも多いです。

 

ただし薬で治療をしても軽快しなかったり、大きさが10cm以上であったり、内部の構造に充実成分や隔壁があったりする場合は悪性を疑い迷わず手術の適応になります。

またチョコレート嚢腫が閉経後もまだある場合は、癌化のリスクがあるため、慎重なフォローが必要です。

卵巣嚢腫の大きさが5-6cmを超える場合は卵巣が捻じれて壊死し、耐えられないほどお腹がいたくなることがあります。この場合は緊急手術が必要です。

 

また感染などがおこったり、卵巣嚢腫が破裂することもあり、この場合も緊急手術が必要です。

 

偽嚢胞といって、卵巣ではない腹腔内の癒着による腫れや水たまりなどが一見卵巣腫大にみえるものもあります。手術をしていたり内膜症や感染症があったりすると、おなかの構造物が癒着といってくっついてしまいます。ホルモンの変動や炎症があったりすると、そこにお水がたまってしまい、一見おなかの中に腫瘤のような腫れがあるようにみえるのです。この腫れに関しては、ジエノゲスト内服やアンタゴニスト(内服または注射)で縮小することもあります。

薬でなおる可能性のある卵巣嚢腫(内膜症性嚢胞(チョコレートのう腫))
手術で摘出が必要な卵巣腫瘍

消失しないもの、悪性の疑いがあるものなどは手術で摘出が必要です。

  • 漿液性線種

  • 粘液性線種

  • 皮様嚢腫(デルモイドなど)

  • 繊維腫

  • 卵管瘤水腫

  • 卵巣癌

手術で摘出が必要な卵巣腫瘍
卵巣嚢腫の茎捻転

卵巣のう腫の大きさが5-6cm以上になると、卵巣の根本(茎)が捻じれてしまい、ひどい腹痛がおこります。時間がたってしまうと炎症が腹腔内に広がるだけでなく正常な卵巣組織まで壊死してしまうため、緊急手術が必要になります。

 

5-6cm以上の卵巣嚢腫があり経過観察中の方は、鎮痛剤でも収まらない腹痛があった場合は、早急に受診して卵巣茎捻転がないか診察をうけることが必要です。

卵巣茎捻転.png
卵巣嚢腫の茎捻転
卵巣健診

卵巣に腫れがないかどうか、腹水がたまっていないかどうか、経腟超音波検査でチェックします。

 

しかし卵巣癌は徐々に癌が進行していく子宮頸がんと違い、今日は問題なくてもあしたからいきなり癌になるという発生機序であるため、定期的なチェックよりも、腹痛やおりもの異常、腹部膨満感、不正出血といった症状があれば受診することが大切です。

 

近年は遺伝性の癌の体質も話題になっています。子宮体がん・乳癌・大腸癌などが代々血縁者に発生している場合は注意が必要なので、癌遺伝外来などの専門機関を受診し相談されることをおすすめします。

卵巣健診
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