女性のホルモンのしくみ
女性のホルモンの仕組みは、脳下垂体と卵巣のホルモンがお互いに連動することでなりたっています。
卵子は脳からの命令によって発育し、排卵するのです。
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月経が終わると、まず脳下垂体から卵巣に卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出され、その刺激によって卵子が発育します。
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卵子は発育するにつれ、女性ホルモン(エストロゲン)をどんどん放出していきます。
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卵子が成熟しエストロゲンが200-300 pg/mLまで上昇すると、それが脳への信号となり、脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます(=LHサージ)。
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LHサージが起こると、約36時間で卵巣から卵子が排卵します。
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卵子が排卵した後の卵胞は黄体となり、黄体から黄体ホルモン(プロゲステロン)が放出されます。
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この時期を黄体期とよび、排卵から1週間前後(=黄体中期)で、個人差はありますが、エストロゲンは100 pg/mL前後に、プロゲステロンは10ng/mL前後に安定し、妊娠に適した子宮内膜になります。
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プロゲステロンが多く分泌されると、基礎体温は高温になります。プロゲステロンは子宮内膜をさらに厚くし、卵子の着床に適した状態に、子宮内膜を整えます。
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排卵した卵子が卵管で精子と出会うと受精し、受精から5-6日前後で、胚盤胞になり、子宮内膜にたどり着き着床します(=妊娠の成立)
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妊娠に至らなければ、排卵日から10日前後で内膜は剥がれ落ちます(=月経)
分泌されるホルモンによっても、脳下垂体からのホルモンは調整されます。
このように脳と卵巣はお互いに連動しながら調整されています。
ピルのしくみと効果
ピルとは2剤の女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)が配合された『低用量ピル』という飲み薬(錠剤)です。
かつてから使用されている中用量ピル(プラノバール)のホルモン効果を保ちながら副作用を減らして、女性が毎日、長期により安全に内服できるように開発されてきました。
ピルを内服すると、ピルにはエストロゲンとプロゲスチンの両方ともが、低用量含まれていますので、脳は『体は黄体期と同じような状態になっている、、、??』と勘違いしてしまいます。
通常は脳からの命令があり、卵子は発育しますが、ピルを内服することで、脳は『体内にホルモンがちゃんとでている状態なので、自分はホルモンを放出して命令する必要はないんだ、、、??』と捉えます。
脳は『体にホルモンがあるので、卵巣に命令しなくていいんだ♪』と安心してしまい、卵巣に命令することをやめてしまうので(=ネガティブフィードバック)、卵胞刺激ホルモンは放出されません。
つまり卵子が発育しませんので排卵も起こりません。
●排卵が起こらないので、精子が子宮内に入ってきても受精する卵子がありませんので、妊娠しません。
[→1:避妊としての効果]
卵子が発育もせず、排卵せずに黄体も形成されないということは、大量の女性ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)も出ることはないので、内膜も肥厚しません。
●低用量のエストロゲンとプロゲステロンだけが形成する内膜は薄いため、月経の時に剥がれ落ちる内膜も少ないので、子宮もその分収縮しなくて良くなり、炎症物質もでないので月経痛も軽くなります。
[→2:月経痛に対する効果]
●剥がれ落ちる内膜が少ないと月経血が少量になります。
[→3:過多月経に対する効果]
●月経血が少量になると、失われる血が少なくなるので、貧血が進みずらいです。
[→4:貧血に対する効果]
一方で、子宮内膜はエストロゲン・プロゲステロンが低用量でも必要な量があれば子宮内にとどまります。
しかし体内のエストロゲン・プロゲステロンのバランスが崩れたり、またはこのどちらかか両方のホルモンが急激に低下すると、子宮は内膜をとどめておくことができずに剥がれおちてしまいます。
●このようにピルは子宮内膜を最低限発育させ、しっかり子宮内に留めておきつつ[→5:不正出血に対する効果]、出血の起こしたい時期にホルモンを減らしたり内服を辞めたりする(=ホルモンをいきなりなくす)ことで、子宮内膜を剥がれ落ちるようにするのです。[→6:月経周期の調整・月経移動の効果]
なおピルによる月経は、正確には排卵をおこしていませんので、月経とは呼びません。
消退出血とよびます。
一方でピルの副作用でも、不正出血することがあります。
この不正出血は、体内でなんらかの理由(ピルのみはじめで、まだ体がピルのホルモンに同期していない、慣れていない等)により、エストロゲンの量が少なくなったりバランスが悪くなったりしても、内膜は子宮にとどまれずに、剥がれ落ちてしまいます。
このような不正出血を、破綻出血とよびます。
自然の状態で排卵がおこると、実は排卵により炎症物質が発生してしまいます。また月に1回の月経で子宮内膜の発育と剥がれ落ちるという女性の体にとって負担のある現象も起こってきます。
●ピルを内服し排卵を抑えること自体が、炎症物質の発生を抑えます。さらにピルの内服方法をフレキシブルや連続投与にし月経の回数を減らすことで、女性の体の負担を減らします。
[→7:子宮内膜症の改善]
[→8:子宮筋腫悪化の抑制]
[→9:妊娠にむけての体のメンテナンス(=プレコンセプションケア]
●自然の月経はホルモンの急激な増減がありますが、ピルは最低限のホルモンを安定した状態に維持します。排卵後の不快な症状は諸説ありますが黄体ホルモンが原因ではといわれています。黄体ホルモンはアンドロゲンというホルモンに近い作用もあります。アンドロゲンは男性ホルモンの一種で、にきびや多毛をひきおこしたりなど、女性には良くない作用があります。ピルは黄体ホルモンの量を最低限に少なくするだけでなく、アンドロゲン作用が少なく開発された黄体ホルモンを配合しています。
[→ 12:にきび・多毛症の改善]